イギリスのお医者さん

イギリスでお医者さんに診てもらう手順はこうである。まずしなくてはいけないこと、それは登録である。自分の住んでいる地域にいくつかある診療所のどれかを選んで、登録手続きの用紙を入手し記入、提出すると、何週間後に登録カードが送られてくる。これでいわゆるかかりつけのお医者さんをゲットできる。
さていよいよ病気になるときがやって来る。「軽いうちにお医者さんに診てもらって治しておこう。」なんて考えはイギリスでは通用しない。病気になったからって、こちらの都合ではお医者さんに診てもらえないのである。必ず予約が必要である。予約の電話をすると、「今日は空いていません。」と言われたからと言って驚いてはいけない。3日以内に予約が取れた時に驚くべきである。私は今まで病気のピーク時にお医者さんに診てもらったことがない。いつもお医者さんとの会話は「…でした。」「今、その状態ではないからなんとも言えません。」となる。なんとも間抜けな話である。
日本のようにお医者さんに行けば、何かしてもらえると思うのは間違いである。日本のお医者さんは、どこか悪いと言うと聴診器を当て、血圧を計り、薬を山ほどくれる。イギリスでは、1つの診療所に何人かの医師が配置されていて、各自、個室を持っているが、その部屋にはとりたてて医療器具は置かれていない。どちらかというと、社長室といった感じである。患者は順番に主治医の部屋に入っていき、問診を受ける。ここでたいていの場合、5分かそこらで診療は終了する。というより、世間話が終わり、部屋から出るといったほうが近いかも。私は部屋を出た後「何をしに来たのだろう…・」と思うことが多い。診療所を出るときいつも不思議な気がするのは、医療費を払わなくていいからである。この診療所は国営で、医療費は100%フリーである。これは学生として滞在する外国人にもて適用されていてすごいと思った。
イギリスと日本では、病気に対する価値観が違う。例えばイギリスでは風邪は病気だと思われていない。お医者さんに行くほどの病気だとは…、と言った方が正しい。イギリスで風邪を引いてお医者さんに行っても、「風邪ですね。」で終わってしまう。イギリスのお医者さんは薬を出さない。と、思っていたら、この間、私は初めて処方箋をもらった。(このときは風邪ではなかった。)ちょっと感動だった。"社長室"を出た後、その処方箋をどこに持っていくのかわからず、受付で尋ねると、「街の薬局で買ってください。」と言われた。これまた意表をつかれた。"お医者さんに薬局が見当たらなかったのはこのためか〜。"一つ謎が解けた。
これまでの話は、国営の診療所についてのものである。診療所で病状が深刻と見なされた場合、国立総合病院に行く。民間の保険に入ってるならば、個人病院に行く選択肢が増える。国立総合病院はただだが、予約は診療所以上に難しく、入院は2年待ちなどといって、経営のあり方が常にイギリスではニュースになっている。個人病院についてはかなりの医療費を覚悟しないといけない。出産を例にとると、妊娠から出産まで国営にかかるのはただだが、個人病院だと通算して100万近かかるらしい。
行きたいときに行け、治療や薬が当たり前の日本の有料医療と、行きたいときに行けず、たいてい薬も治療もないイギリスの無料医療、どちらがよいのか?!ちなみに、もちろん本当に緊急の場合はイギリスのお医者さんだって診てくれます。